<番外編>




「WXIII機動警察パトレイバーthe movie 3」を観て(2002.04.06)


注:せっかく800円出して買ったパンフレットを全く読まずに書いてます。

まず、今年2本目の映画、それも2作続けて良い意味でのアニメだったわけだが、
二ヶ月ほど前に観た∀に比べて、観客層が狭いなぁと思ってしまった。
映画館の場所的な問題もあったのかもしれないが、それにしても・・・。
∀はガンダムであるがガンダムでないのに、その観客のバラエティーさには
良い意味で驚かされた。∀などは、よほどのマニアックな人間しか見に来ないかと
高を括っていたら、逆に見た目がマニーな人は殆どいなかった。
それに比べ、今日のパトは見た目マニーな人が多かったなぁ。
観た場所は、舞浜のイクスピアリである。別にアキバが近い訳でもいなから、
とりわけマニーな地域ではない。というよりも、ディズニーリゾートの
一角を担うイクスピアリである。洒落たショッピングモールというか複合施設というか。
そう言う環境を考慮しても、パトの観客は∀に比べマニア度が濃かったと思う。
逆に、女性率は割と高かったのが不思議でもある。
ゆうきまさみ氏のコミック版、10歩譲って新旧OVA・TV版に女性ファンがいたとしても、
押井守監督の劇場版2作品に女性ファンがそんなに多かったとは思えないのだが。

さて、どうしてイクスピアリで観たかと言えば、理由は色々ある。
@チケマガDVDを予約するための最寄りローソンがつぶれてしまったため、
 また予約開始時期には、3/Eに出張の可能性が少なからずあったため、
 利便を考えて実家近くのローソンで予約した。
 →実家最寄りの公開映画館がイクスピアリだった。
A廃棄物13号と言えば、京葉線木場駅!
 原案のコミック版では木場の貯木場でのイングラムと13号の対峙が
 (当時、京葉地区住人としては)身近で印象的だった。
 →木場に近い舞浜のイクスピアリ
B新OVAでイングラムとグリフォンの最後の戦場が
 ディズニーランド(当時ディズニーリゾートという名称はなかった!)西側道路・南側ホテル街
 →舞浜で映画館と言えばイクスピアリ
C湾岸なら東京でも千葉でも関係ない!
Dイクスピアリに行ったことがない
というプライオリティーの元にイクスピアリに決定した。

ところで余談だが、いまこの文はノートPCでTVを見ながら書いている。
コミック版で後藤隊長が(デスクトップ機だが)PCでニュースを見ながら
ヒゲを剃っていた場面を思い出す。あの頃の未来(20世紀末〜21世紀初頭)と
現実が微妙に一致しているようで感激だ。

では、本題に入ろう。
まず、パンフレット。本編用とミニパト用が別になっているとは思わなかった。
上手い商売だね。チケット代は一本の映画分だけど(そりゃ、ミニパトの
上映時間を考えれば当然だけど)、ミニパトのパンフで600円も取るとはねぇ。
今の時期のパトレイバーを考えると、見に行くのは完全にコアなファンな
訳だから、確実にミニパト用のパンフも売れるよなぁ。商売上手というか、
どぎついというか。まぁ、確かにパンフレット自体のイメージを考えると、
格好良く作る本編用と遊び感覚満点のミニパト用があって良いわけだ。

な〜んて言ってる側から、実はミニパトには結構期待してたんだよね。
何と言っても押井守氏が脚本だって言うし。パトレイバーの裏話が聞けるって言うし。
でも、その割に週替わりで3作品というのはねぇ。これもコアファンの心理を
上手く操る策略かねぇ〜。

と思いつつ、10分以上に及ぶ予告編を見終わったら始まったのが
ミニパト(vol.2栄光の98式)だった。「えっ?やられた!」というのが
正直な感想だった。今まで、この手のおまけ的同時上映って本編の後に
やらなかったっけ?(一応断っておくが、入れ替え制の劇場だった)
確かにこうすれば、本編だけ観て、ミニパトは見ないという観客防止には
なるけど。でも、上述したように今作のパトレイバーは明らかに、パトレイバー
好きな人のための作品なのだから、黙っていてもミニパト見てくれると
思うんだけどなぁ。

いつもの事ながら前置きが長くなってしまった。以下、ネタバレ的内容も
あるかもしれないので・・・。

まず、全体を通して思ったこと。良い意味でも悪い意味でも、押井版劇場作品を
意識しているなという点。特に街の描写が劇場第一作的だったのが印象的だった。
冒頭東京湾を航行する漁船の風景。そして曇った空。押井守氏に敬意を表しているのか
それとも前二作の呪縛から逃れられないのか、そう思ってしまった。

さて、多分、多くの人が気になっていたのが、どうやってクローズした作品に
仕上げているかという点だと思う。なぜならば、コミック版の13号編は、
晴海グリフォン編からの流れを完全に引きずっていたからだ。
そう、グリフォン搭載のASURAの発する信号に呼応して動く13号の姿が描かれていたからだ。
俺はこの点が一番気になった。

ところがフタを開けてみて驚いたのは、(13号により)被害を受けたレイバーが
”シャフト”製だと言っていた点。一瞬はは〜ん、当然じゃんと受け止めたが、
えっ?どうしてとなり、そしてやっぱりシャフトは悪者かよ〜と思ったのだが。
結局、シャフト製超伝導モータが発する高音域が原因となるわけだが、
その他に、アナログレコードの高音域だと言ってみたり、特殊な電動こけしだと
言ってみたりしていたが。これって結局、シャフト製レイバーが巷に溢れていれば、
13号はそれを求めて歩き回ったわけだし、湾岸域にもっとクラブがあれば、
そこも襲われていたわけで・・・。
で、結局何が言いたいかといえば、この手法ってHOSと何ら変わってないと言うこと。
つまり、特定周波数により暴走が始まるHOS搭載レイバー。対して特定音域を求めて
彷徨い歩く13号。材料は同じで味付けを変えているだけだと思えてならない。
まぁ、そんなに否定的に言っているわけではないのだが。
確かに、ASURAに反応していた13号という原作があったわけだが、あれが成り立ったのは、
ASURAというものは、少なくとも東京湾には一つしかなく、その特殊な周波数帯を出す物体は
ASURAしかないという仮定に異議を挟む余地がなかったからだ。
原作のASURAという一品を他の物に上手く置換できなかったという点が残念だ。
高音域というのも良いアイディアだなぁとその場では思ったが、よくよく
噛みしめてみたら、ちょっと甘かったんじゃないかと思ったのだ。
どちらかというと漠然と存在しうる原因だったのではなかろうか。

だが、この設定が効を成していたと思える点もあった。
それは、13号がレイバーを着た原因を上手く作り出していた。
俺がASURAの存在と共に気になっていたのは、シャフト・ヨーロッパ製のサイレンだ。
ASURA捜索という目的があったからこそ、海に潜り13号に乗っ取られたサイレン。
確かに、冷静に考えればサイレンである必然性はないのだが、普通に考えれば、
13号とレイバーの接点が見つからない。
そこに、シャフト製超伝導モータ搭載のレイバーという因子が加わることで、
この点に限っては、13号がレイバーを着ているという言い訳を作ってくれた。
ところで、原作で13号がレイバーを着た(着せられた)のは、ゆうき氏が
13号を描くのが大変だったからだと思っていたのだが・・・。
現に「じゃじゃ馬グルーミンUP」で馬を描くのはレイバーを描くより難しいって
書いてたでしょ。怪物ってどちらかというとレイバーより馬よりじゃん。
だから、俺の理屈で言えば、今回の13号は別にレイバーを着る必要性は
なかったと思うのだが・・・。

では、次は一番の問題。この話がパトレイバーである必要があったのか、
そしてパトレイバーでも怪獣映画でもないこの作品の属性はという点に
触れていきたいと思う。

パトレイバーの劇場版第三弾ができる、それも廃棄物13号ネタらしい、
という噂が流布しだしたのは、もう何年前のことだろう?
数年全く情報が表舞台に出ていない時期もあった。
製作中止になったのか、色々考えられたが、ネットを探ってもそう言う記述すら
見つからない。次第に、情報を漁ることもなくなっていった。
ある時、それでも今から2〜3年前だったと思うが、週アスか何かに
それらしい話が載っていた気がする。それでも、その時点での情報は
少なすぎ、そして公開情報が表舞台に出だした、去年末頃には、
私自身が日本にいなかったと言うことも手伝って、今作の情報を殆ど持たず、
いや敢えて情報を入れずに、観たのだった。

そう言えば、今作が公開になると悟ったのは、出張先の中国でガンダムエースvol.3の
発売日を漁って角川系ページを見ていたとき、ニュータイプ何月号の表紙は
イングラムという記事を見たときに、「えっ?どうして今頃パト?」と思い、
ひょっとして13号?と思ったのだった。

さて、いくら情報を漁らなかったと言っても、今作でイングラムはおろか、
特車二課が活躍しないという話は知っていたが、(というよりも、情報が
出だした去年末あたりにちょっと興味本位で漁ってみたところ、声優陣に
見慣れた名前がなかった等の理由にもよるが)、あそこまで野明や遊馬が
しゃべらないと思わなかった。唯一セリフの多かった後藤隊長にしても、
特に劇場2作目での活躍が目立ったためか、いやコミック版13号での
指揮ぶり(?)が印象的だったためか、今回は悲しいくらい脇役だったなぁ。

公開2週間前、私が実際に観に行った3週間前の事だが、実家に帰ったついでに
(というよりもこのために帰った?)コミックの13号を一気に読んだ。
その割には、パンフレットを眺めていてキーパーソンの”冴子”の名字が
思い出せなかった。東都生物工学研究所の栗栖博士、宮ノ森両名は、コミック版と
全く同じ名前だったのに、冴子だけは、名字が違った。いや、媒体によっては
冴子としか表記していない物もあった。
劇場内で時間までの間、冴子の名字を思い出す作業に没頭した。まぁ、没頭した
というほど大げさでもないが。答えは簡単、コミックを思い返しみれば出てきた。
ニシワク・セル、そう西脇冴子だ。では、西脇でないと言うことは、ニシワキ・セル
でもないと言うこと。と言うことは、南極12号等全部ないと言うことなの?
もう、頭の中、疑問符”?”だらけだったよ。良い意味で。

で、蓋を開けてみれば、冴子は冴子でニシワキ・セルもきちんと存在していた。
ただ、他のキャラクターに比べ、冴子のビジュアルだけ明らかにコミック版と
違っていた点を鑑みるまでもなく、冴子回りだけは違った設定になっていた。
そこに松井刑事ではない、新たな刑事が絡んでくるわけだが、こうなってくると、
この映画の意義が良くわからなくなってきた。
だって、パトレイバーとタイトルを大きくうたっているわけではないが、
パトレイバーの世界観を借りているのに、パトレイバーの存在が薄い。
松井刑事では描けない、人間ドラマを描くがために新刑事を登場させているのだろうが、
ではそのために冴子をはじめとする13号キャラクターが使われたのだろうか?
う〜ん自分でまとまりがつかなくなってきた・・・。
とにかく13号はその原作のイメージからすると、生物兵器という重いテーマ(?)
の割に、明るい(2課の特性を活かした)内容だったのに、どうしてあんなに
重く暗い話になってしまったのだろうか?
それは、やはり前述したように、押井版を意識しすぎたのだろうか?

脚本のとり・みき氏については週アスに連載している4コマくらいしか知らないが、
総監督の高山文彦氏は、ガンダムOVAの第一弾を切り開いた人である。
「0080ポケットの中の戦争」は確かに、ガンダムの世界観を借りたまるで、
本編とは別視点のガンダムであった。以降、ガンダムの世界ではニュータイプ論の存在しない、
=富野思想のないガンダムが認められていくわけだから、このような13号の映画が
あっても良いのだろうか?
ただ、いくら2課が活躍しないとわかっていても、活躍しなさすぎなのが、
ファンにとってはフラストレーションが溜まったのではなかろうか?
ただ、2課の活躍の舞台が少なかった劇場2作目も存在しうるが、そこは
押井守氏の世界観で構成されており、それほどフラストレーションを感じさせなかった。

今作は、いたずらに13号というものがすでに存在したが故に、
全く違う物であるはずが、違う物になり得ていたかったのではなかろうか?


と、きれいにまとまり書けたが、まだ書きたいこともあるので、綴ってみる。
次からは、気になったことを適当に・・・。
まず、其の一<13号絡み>
・肉片の鑑定場所について
 科警研から肉片の鑑定依頼をされた場所だが、東都生物工学研究所以外の
 2研究所が変わっているのが笑えた。東(京?)大とかずさ(アカデミー?)。
 かずさはいいとして、東大の生物関係の研究ってそんなにすぐれてるの?
 あぁ、確かに理Vの医学部があるか・・・。
・かずさはどうして襲われたの?
 かずさの研究所は何に襲われたの?
 13号の肉片?
 いくら、13号でも東京湾を横断して房総半島に乗り込まないよな。
 だとしたら、やはり肉片が小型13号になったの?
 で、そいつの処分はどうしたのだろうか?
 その辺の描き方が中途半端だったよな。ちゃんと答えだしてよ!

其の二<警察の描き方>
 お〜い、我らがパトレイバーまで、「踊る」の影響を受けてしまったのか!
 あの捜査本部の会議風景、まさに「踊る」じゃん。
 「踊る」の影響は、その後の殆どの刑事ドラマに与えていると思ったが、
 まさか、パトレイバーまでその影響を受けているとは思わなかった。
 私は、「踊る」もかなり好きだが、ちょっとショックだったね。
 こうなると、押井守氏ならどう再現するか観てみたいものだ。

其の三<カラスとカモメ>
 カラスとカモメの描写が多かった。カラスは劇場版第一作(=帆場英一)を
カモメは劇場第二作(=ベイブリッジ)を思い出す。
 この辺りも、全二作を意識していると思った理由。


<もう一度見に行ったので続く>
 その前に、かなりローカルネタだが、10年来の友OZ、ごめんなさい。
実は、2回目だったんだよ。別に騙すつもりはなかったんだ。
つい”観た”と言えなかったんだ・・・。こんな私を許して。
「ケイゾク」のツケと、「トリック」付き合うからさ。
言い訳させてもらうと、君が勉強に忙しいみたいだったし(TNKの件、行けないって言ってたし)
ぼんやり待ってると、上映期間終わってしまうからと思ったから・・・。



 さて、今回は少し落ち着いて振り返ってみるか(興奮せずに”落ち着いて”考察できればだが))。
今回は、箇条書き的に書いてみる。

・東都生物○学研究所
 コミック版では生物工学研究所だったと思うが、どうして生物医学研究所に変わったのだろう。
ガン細胞等扱う関係から、医学の方がふさわしいと思ったのだろうか?

・スタジアムで指揮権(出番)が警察側にまわったとき、後藤隊長と久住は
 冴子の娘がピアノを弾いているテープを使った。
 陸自側は「それは使わないはずでは?}と言ったのはどういう意味か?

・13号を初めから焼く気だったとはどういうことか?

・13号をスタジアムに導くために使われた、自衛隊(海自or陸自?)所有の水中レイバー
 ”りゅうじん”。13号が引かれる超音波を切れなくなって、パニクり、最終的に石原一佐の
 指示のもと撃沈されたが、あれはどういうこと?パイロットは殉職?
 同僚の手に撃たれるのと13号の餌食になるのはどっちが良かったのだろうか?
 怪物に喰われる恐怖を与えられるよりも、上官に引導を渡された方が彼等には
 良かったのだろうか?

<続く>

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